第36回「OISA技術交流会」開催
日 時:2024年12月4日(水) 13:30~17:30
場 所:ハイブリッド開催(現地会場:株式会社オーイーシー新社屋)
OISA技術交流会は、大分県における情報サービス関連技術の向上と発展を促し、さらなる振興を図ることを目的に毎年開催されています。本年度は株式会社オーイーシー新社屋を現地会場とするハイブリッド開催とし、オンライン参加者を含め120名を超えるご参加をいただきました。
加藤会長による開会あいさつに続き、NTT版LLM「tsuzumi」のご紹介、大分大学のDX基盤モデルのご提案、そして、会員各社の中堅・若手技術者が集った「技術研究会」の成果発表が行われました。
第1部
講演「NTT版LLM tsuzumiを含む生成AIの最新技術動向」
日本電信電話株式会社 執行役員 研究企画部門長 木下真吾氏より、NTT研究所と研究トピックスのご紹介の後、軽量で日本語に強く柔軟なカスタマイズが可能な国産LLM「tsuzumi」について、技術的な解説をしていただきました。また、AIエージェントやデジタルヒューマン、マルチモーダル対応といったtsuzumiの拡張・応用の実例が挙げられ、AIコンステレーションによる社会課題解決や集団意思決定などの最新研究事例についても言及されました。さらに、今後のAIとの付き合い方について、制御性と信頼性の観点からの洞察と展望が示されました。

木下 真吾 氏
第2部
講演「大学の公共性を活かした知的共創で拓くDX基盤モデルの実現」
大分大学 DX人材育成プログラム 准教授 大知正直氏より、大学でのリスキリングで組織のDX人材を育成するご提案がありました。企業等でのDXプロジェクトの多くが失敗に終わっている原因を考察し、組織内に「DXエンジン」(自ら課題を設定し、自立能動的にDX導入を達成できる人)が必要であることを確認した後、大学という公共的な場で実際のDX課題の設定と解決に取り組むことによって、企業人材のDXエンジン化と、その人的ネットワークの形成を実現するという、DX推進の基盤モデルが提唱されました。

大知 正直 氏
第3部
技術研究会発表会
生成AI部会 Aチーム
「RAGおよびFunction-Callingによる旅程提案アプリの開発」
ユーザーの好みに基づく旅程を提案するアプリを開発しました。この旅程提案アプリでは、Function-Callingによって宿泊施設の空室状況や交通手段などのリアルタイム情報を取得し、効率的に最適な旅程を提供します。また、RAG(検索拡張手法)を活用して、その地域に特化した情報にもアクセスを可能にし、旅行者に豊かな体験を提供します。成果は期待通りで、多言語対応を含む外国人向けの展開や、他の分野への応用の可能性も模索されています。

Aチーム
生成AI部会Bチーム
「生成AIによる対話形式の小説生成と応用可能性」
小説生成アプリは、生成系AIがどのように創作を行うのかを観察するために開発されました。ユーザーはアプリ内でジャンル、読み手の対象、口調などを選択し、生成系AIがそれに基づいて小説を生成します。課題として著作権の問題が存在しますが、プロンプトの工夫により特定の作家風の作品やテストを作成することも可能です。この技術は、教育、ビジネス、エンターテインメントの分野において新たな可能性を見出すことができました。

Bチーム
量子コンピューティング部会
量子コンピュータープロジェクト
「量子コンピューターで観光ルートの最適化を探る」
観光地15か所を最短ルートで回る計算を量子コンピューターで実施し、その高速処理能力を実証しました。従来のコンピューターでは数カ月かかる計算が、量子コンピューターでは短時間で完了します。これにより、高速な計算と最適化という量子コンピューターの強みがわかりやすく示されました。技術は現在、まだ黎明期にありますが、将来的には不可欠な存在となる可能性があります。また、今後の人材育成の重要性も強調されました。

量子コンピューティング部会
まとめ
本研究会を通じて、新たな技術を活用し、未来の発展に向けた基盤を構築することを目的に活動しました。生成AI部会は、ユーザーのニーズに応じたアプリケーションの開発を通じて、新しい情報提供と創作の場を追求しています。一方、量子コンピューティング部会は、量子コンピューターの高速処理能力を実証し、その応用可能性を探求しています。これらの取り組みは、技術が将来的に重要な役割を果たすことを示しつつ、今後の成長と革新への道を切り拓くことに期待が高まります。