DTM作品を制作しよう!
コンテストの応募を目指して、DTM作品を制作しましょう。応募に適している作品は、やはり自己満足の作品ではなく、より多くの人が良いと感じるものでしょう。
1つの音楽作品ができあがるまでには(CDなどになるまでには)、通常、大勢の人の力が必要です。まずは、作曲家(コンポーザー)です。楽器などを使って作曲し、楽譜を書いて演奏家に渡します。次に、演奏家(パフォーマー)です。作曲から受け取った楽譜を見て演奏します。そして、音響技師(エンジニア)がその音を録音し、CDなどにします。どんなに良い作曲家が良い作品(譜面上で良いもの)を作曲をしても、演奏家が上手でなかったり(演奏が下手)、エンジニアが上手でなかった(音質が悪い)としたら、きっと良い作品とはならないでしょう。
DTM作品を制作するには、この三役をひとりでこなさなければなりません。ここでは、
- 第1段階:作曲段階(作曲家、コンポーザー)
- 第2段階:演奏段階(演奏家、パフォーマー)
- 第3段階:録音段階(音響技師、エンジニア)
と呼びたいと思います。どの段階も上手に制作していきましょう。この「DTMの作品制作のコツ」ページ、6回シリーズのうち、1・2・3回は第1段階を、4・5回は第2段階を、そして6回に第3段階のお話をしたいと思います。
今回は、まず第1段階に入る前の基礎的なお話をします。作曲するには、いくつか守ったほうが良いルールがあります。大勢の人が心地良いと感じるためのルールです。まずは、そのルールをいくつかお話します。このルールを使って作曲し、慣れてきたらこのルールを破っていきましょう!
ルール1 : 『白い鍵盤だけで作曲すればよい!』
ピアノの鍵盤を思い出してみましょう。ピアノの鍵盤には白い鍵盤(白鍵)と黒い鍵盤(黒鍵)があります。下の図のように白鍵だけを使うと「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」となります。「ド・レ・ミ…」はイタリア音名で、日本音名は「ハ・ニ・ホ…」です。DTMでは「C・D・E…」という、英米音名を多く使います。(ドイツ音名と異なりますので、楽器経験のある方は注意してください。) 「ド」から1つ上の「ド」までを「オクターブ」といいます。「1オクターブ上のド」、「1オクターブ下のド」などと使います。
黒鍵は、それぞれの間の音で、「♯」(シャープ、半音上げる)や、「♭」(フラット、半音下げる)で表現されます。黒鍵を挟む音階を全音階、挟まない音階を半音階といいます。黒鍵を含めた音階が、等間隔の音階です。ミとファの間と、シとドの間は半音階で黒鍵はありませんが、ほかは全音階で黒鍵があります。つまり、「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」は等間隔ではないのです。でも、この等間隔ではない音階を使って作曲すると心地よく感じるのです。白鍵をたくさん使い、黒鍵を時々使って作曲します。
※黒鍵をたくさん使って作曲されたものもありますが、これは「調」というものが違うのです。楽譜で言うと、五線譜の最初に♯や♭がいくつかついているものです。カラオケで音域が合わない時に、音程を上げたり下げたりしませんか? 「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」の「ド」にあたる音を、上下させていて(移調)、「0・2・4・5・7・9・11・12」の音程の関係をキープさせるために、♯や♭がつくのです。MIDIシーケンスソフトには「トランスポーズ」という便利な機能がたいていありますので、白鍵だけを使って作曲し、必要に応じて(音域が合わない場合など)、上下(移調)させてみましょう。
まずは『白い鍵盤だけで作曲すればよい!』のです。
ルール2 : 『メロディーは、明るい曲ならCで始めてCで終わる! 暗い曲ならAで始めてAで終わる!』
「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」には、それぞれ役割があるのですが、特に「ド」は主音といいます。主音で始まり、主音で終わると、大変心地よいメロディーになります。音楽は、実は「明るい曲」と「暗い曲」の2つしかありません。明るい曲を「メジャー」、暗い曲を「マイナー」と言います。
「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」は「メジャー」で、明るい曲で使われる音階なのです。数値で表すと、「0・2・4・5・7・9・11・12」となります。「マイナー」、暗い曲の音階は、「ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ」で、主音は「ラ」になります。数値で表すと、「0・2・3・5・7・8・10・12」となります。
ちなみに、メジャーの(明るい)曲の「ド・レ・ミ…」を、全て「ラ・シ・ド…」に置き換えると、マイナーの(暗い)曲に変えることができ、逆にマイナーの(暗い)曲の「ラ・シ・ド…」を、全て「ド・レ・ミ…」に置き換えると、メジャーの(明るい)曲に変えることができます。
まず、『主音で始まり主音で終わるメロディー』を心がけて作曲してみましょう!
ルール3 : 『4小節や8小節を1単位(フレーズ)とし、文章でいう「、」や「。」を入れる。』
音楽は、「ある程度繰り返し、ある程度繰り返さない」のが心地よく感じると思われます。その繰り返しの単位には、4小節や8小節がよく使われ、「フレーズ」といわれます。文章を書くのと同じように、4小節や8小節に一度、「、」(てん、読点)や、「。」(まる、句点)に相当する部分となる、伸ばす音や休符のあるメロディーとしましょう。
「。」にあたる部分は、ルール2より、メジャーの曲の場合は「C(ド)」の音、マイナーの曲の場合は「A(ラ)」の音となります。「、」にあたる部分は、「まだ続く」と感じさせるために、「C(ド)」や「A(ラ)」の音を使わないのもよいでしょう。
フレーズを意識し、『「、」や「。」を入れたメロディー』を書きましょう!
ルール4 : 『コードは「C、Dm、Em、F、G、Am」でOK、明るい曲はC、暗い曲はAmが出入口!』
複数の音を同時に鳴らす和音(コード)は、非常にたくさんの種類があります。しかし、ルール1の「白い鍵盤だけで作曲」していく方針とすると、使ってよい基本的な和音は、たった6個になります。それが、「C、Dm、Em、F、G、Am」です。「m」(小文字のエム)が付いているものは「マイナーコード」で、付いていないものが「メジャーコード」です。「メジャー」は明るい響き、「マイナー」は暗い響きがします。
6個のコードの構成音は、
- 「C」(シーメジャー):C(ド)、E(ミ)、G(ソ)
- 「Dm」(ディーマイナー):D(レ)、F(ファ)、A(ラ)
- 「Em」(イーマイナー):E(ミ)、G(ソ)、B(シ)
- 「F」 (シーメジャー):F(ファ)、A(ラ)、C(ド)
- 「G」 (ジーメジャー):G(ソ)、B(シ)、D(レ)
- 「Am」(エーマイナー):A(ラ)、C(ド)、E(ミ)
となっています。
上の図には、「シ・レ・ファ」の和音、「Bdim」(ビーディミニッシュ)も記載しています。この和音は、「Bm−5」(ビーマイナーフラットフィフス)と記述されることもあります。また、マイナースケールでは、図の「自然短音階」のほかにも「和声短音階」や「旋律短音階」などもあります。
構成音の最初に書いた音を根音(ルート、図の黒い音符)と呼びます。シーメジャーのド、ディーマイナーのレです。これを0として、黒い鍵盤も含めて数えてみると、メジャーコードは、2つ目の音(赤い音符)は4半音目、3つ目の音(黄色い音符)は7半音目の音です。マイナーコードは、2つ目の音(青い音符)は3半音目、3つ目の音(黄色い音符)は7半音目の音です。つまり、「0・4・7」が「メジャー」、「0・3・7」が「マイナー」で、この数値だけ覚えていれば、「○メジャー」と「○マイナー」の全てのコードが演奏できるようになります!
コードにも役割があります。トニック、ドミナント、サブドミナントの3種類です。
- 「T]トニック :C、Am
- 「S」サブドミナント:F、Dm
- 「D」ドミナント :G、Em
この3つのグループのコードをぐるぐる回しましょう。曲の最初と最後はトニックにしましょう。つまり、メジャーの(明るい)曲であれば「C」が曲の出入口、マイナーの(暗い)曲であれば「Am」が曲の出入口となります。図の矢印のようにコードを進めていくとよいでしょう。矢印はまだまだ書き込みの余地があります!
図には他のコードも記入してあります。例えば、「Am7」ですが、これは「Am」に7thと呼ばれる
音(ルートから10半音目、Gの音)を付けたものです。
なお、これは「C」と「Am」を組み合わせた音(A・C・E・G)にもなっています。
ではここで、4拍子のマイナー(暗い曲)で、8小節の作曲に挑戦してみましょう。マイナーの曲ですので、Amで始まり、Amで終わらせてみます。上の図を参考に、「Am→G→F→G、Am→G→F→G→Am。」としてみましょう。それぞれ1小節(4拍)ずつコードを変更していきますが、最後から1つ手前の「F→G」は2拍で変化させて、8小節におさめます。
図はピアノロール表示などと呼ばれるもので、右向きに時間が進み、演奏されていきます。数字は小節番号を、アルファベットがコードネームを、赤いバーが抑える鍵盤(使う音)となります。
トニック、サブドミナント、ドミナントの三角関係?を、ぐるぐると巡らせましょう!
ルール5 : 『コードの構成音を中心に使ってメロディーを! それ以外の音を使うなら、白い鍵盤の音を!』
コード進行が決まったら、次にメロディーをのせてみましょう。先程の赤いバーの音(コードに含まれる音)を中心に使います。またオクターブ違う音(次の図のピンク色のバー)を使ってもかまいません。更に、コード以外の音も使いましょう。ただし白い鍵盤の音です。マイナーの曲ですので、Aの音で開始し、Aの音で終了しましょう。「、」や「。」にあたる部分は、音を伸ばしましょう。
上の図で、緑色のバーがコードに合うように書いたメロディーです。なお、これは、第15回グランプリ曲の「流れ星」のサビのフレーズです。楽譜にすると次の図のようになります。
この楽譜はイ短調(白い鍵盤のみで演奏できるマイナーの調)となっていますが、原曲はロ短調(楽譜の最初に♯が2つ付く調)です。MIDIシーケンサーの機能で「+2」半音すれば、よいことになります。つまり、「A・B・C・D・E・F・G」が「B・C♯・D・E・F♯・G・A」となります。
実際の制作方法とは異なるとは思いますが、本コンテストの第15回・第17回で、グランプリを受賞されている岡崎温子さんの協力のもと、グランプリ受賞曲を例に、2回以降のお話もさせて頂きたいと思います。
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